北海道

第4章 計画の主要施策

第1節 グローバルな競争力ある自立的安定経済の実現

3.東アジアと共に成長する産業群の形成

 グローバル化の進展と東アジア地域の急速な成長は、我が国にとって市場拡大の好機である。北海道が地理的特性、固有の資源、培われた技術、各種基盤等を最大限に活用し、東アジアと共に成長していく産業群の育成を図ることが重要である。
 このため、既存産業集積や技術的蓄積など地域の強みを活かした産業の育成を図るとともに、物流機能の強化や人材の育成などの条件整備を図ることが必要である。
 
(1) 地理的優位性を活かした産業立地の促進
 北海道は、北米と東アジアとを結ぶ線上に位置し、ロシア極東地域にも隣接している。また、日本海側と太平洋側のそれぞれに港湾を有し、その間に空港や工業団地などの基盤の集積が存在している。これらの地理的優位性を活かし、北米及び東アジア各地域との一層迅速で円滑かつ低廉な物流を推進することで、東アジア地域の成長と活力を取り込んでいく産業群の形成を図ることが重要である。
 このため、苫小牧港、石狩湾新港、新千歳空港などの国際物流機能の強化を図るとともに、既存の産業集積を活用した生産拠点の形成を促進する。また、素形材産業などの基盤技術に関する産業の育成や地場企業の技術力の向上を進め、加工組立型産業の集積を促進する。これにより、国際物流・交流拠点と生産拠点とが一体となった相乗効果の発揮を目指す。
 苫小牧東部地域は、これらの港湾や空港に近接し、広大かつ自然環境にも恵まれた、開発可能性の高い貴重な空間である。関係機関の緊密な連携の下、自動車関連産業、リサイクル産業など既存立地分野の一層の集積を促進する。また、バイオ燃料関連産業等の新たな産業の育成、自然エネルギー源を活用した大規模農産物貯蔵施設の整備と高品質な農水産物の輸出、国際物流関連企業の誘致を促進し、国際総合物流ターミナルの形成を図るなど、東アジア地域を視野に入れた取組を戦略的に推進する。あわせて、他の土地利用についても検討しつつ、当該地域の開発を推進する。
 
(2) 強みを活かした産業の育成
 
(IT、バイオ、環境・エネルギー関連等成長が期待される産業の育成)
 これまで「北海道産業クラスター創造プロジェクト」として産学官が一体となって育成してきたIT、バイオ産業は、大学発ベンチャーの誕生や研究拠点、インキュベート拠点(注11)の形成など、産業としての地域的優位性を発揮しつつある。このような好条件を活かし、両産業を国際競争力を有する産業として成長させるとともに、これらの分野の技術革新は他の産業に幅広く影響を及ぼすことから、域内での技術移転を積極的に進め、道内産業全体の底上げをもたらすことが重要である。
 また、環境・エネルギー関連の技術は、資源の再生利用やエネルギー源の多様化等の観点から、北海道において集積を進めることが必要である。東アジア地域の急速な経済発展がもたらすエネルギー需要や環境負荷の増大から、これらの技術を利用するビジネスチャンスも拡大している。
 このため、IT、バイオ産業については、企業と大学・研究機関等の連携の下に先端的な研究を実施するとともに、研究開発型企業の誘致、コーディネート人材・組織の確保・充実を進め、一層の知的資産の集積と活用を促進し、新事業・新産業の創出を推進する。特に、こうした産学官のネットワークや新たな技術を活用し、農水産業や食品加工業の生産効率、安全性、品質の向上に向けた取組を進め、食にかかわる産業の高付加価値化を推進する。
 また、風力、バイオマス等の自然エネルギーや水素エネルギーといった、北海道において優位性のあるクリーンエネルギーに関連する技術や、リサイクル関連産業を始めとする環境ビジネスに関連する技術について、産学官連携による研究開発や事業化・企業化を促進する。
 
(森林資源を活かした産業の育成)
 木材の需要が、品質及び性能の明確な製品を大量かつ安定的に求める構造に変化している中、北海道においては、利用拡大が期待されるカラマツ人工林の多くが主伐期を迎えつつあるなど利用可能な人工林資源は増加している。こうした状況から、木材産業において、市場のニーズに対応した品質及び性能の明確な付加価値の高い製品の生産を拡大し、安定的かつ低コストで供給することにより、道産材の競争力強化を図ることが必要である。
 このため、合板、集成材等の製品を低コストで生産するための高次加工施設を整備するとともに、製材工場については連携や協業化等による規模拡大を図るための取組等を促進する。また、計画的な伐採や植栽等により森林資源を保全しつつ、施業の集約化及び低コストかつ高効率な施業のための作業システムの整備等木材の安定供給体制の整備を促進する。
 
(3) 産業育成に向けての条件整備
 人口が減少していく中、北海道が活力ある地域として発展するためには、発展を支える人材を育成すること、北海道内の資金を道内の有効な投資に結びつけることが必要である。
 このため、高度な技術を有する人材を育成する大学、試験研究機関などの集積、産学官・企業間の連携の強化による地域の知の拠点の活性化を促進する。また、内外の能力ある人々が北海道において研究開発活動を展開、継続し得る環境づくりを進める。
 さらに、若年層の流出は発展の基盤の喪失につながることから、職業能力開発や地域における就業情報の提供など、若年層が北海道で活躍できる雇用環境の整備を促進する。
 加えて、域外市場への販路拡大、地域資源を活用した新たな取組の掘り起こしや地域資源のブランド化等に向けた地域一体の取組を促進する。
 
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(注11)インキュベート拠点:起業を考えている個人や創業間もない企業に負担の少ない入居費用で賃貸スペースを提供するとともに、専門スタッフが事業計画作成のサポート、マーケティング支援などの経営ノウハウを提供し企業の成長を促進させることを目的としている支援システムと連携活動の拠点。

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